Long Story

□敢闘、その後
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その、いつもとは打って変わったシエルの態度が異様だったのだろう。
セバスチャンは微かに瞠目しながら答える。

「いえ、ご心配には及びませんよ」

そこまで心配されてしまっては心外です、と人当たり良い笑みを浮かべながら言葉を続けた彼に向けて、フンと鼻を鳴らしてからシエルは口角を釣り上げて返してみせた。

「人間に担がれる悪魔というのはさぞかし見ものだろうからな。遠慮はいらんぞ?」
「結構ですッ!」

笑みを一瞬で強ばらせた執事の様子を満足げに眺めて、シエルは縄梯子を登る行為を再開する。
強風が吹き付けて、時に大きく揺れる縄梯子は予想以上に登りづらかった。
それでもなんとかかんとか頂上まで無事に辿り着き、甲板から身を乗り出してシエルを見守っていた救助船の船員が差し伸べた手にすがりつく。船員はシエルを軽々と抱きかかえ、船の上へと丁寧に下ろしてくれた。

「大丈夫かい?」
「…ああ」

軽くよろけてしまったシエルを気遣う船員に返答しつつ、シエルは痛くない方の足に体重を乗せて甲板に立ち直す。
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